国際交流ワークショップB

日本1日目(大丸有)

Urban renewal by PPP to strengthen international competitiveness

2週間にわたって行うトロント大学生との国際交流WSの初日として、担当学生による東京全体の都市計画史の紹介を行った。また午後は大手町・丸の内・有楽町地区の官民連携PPPによって形成される統一した景観や、歴史的建造物の保存に伴う容積率移転、公開空地や歩行者空間などの様子を実際に歩きながら紹介し、各所で見られる民間企業の公共貢献に対する政策支援の必要性について議論を行った。

大丸有地区

 大手町・丸の内・有楽町(大丸有)は、東京駅周辺に拡がり、皇居の東側に位置する約120haに及ぶ南北に細長い地域である。地区内建物数109 棟(解体・建設中を含む)、就業人口は約23 万人のエリアで、国内外の企業が本社を構えおり、日本の経済活動の中心的役割を果たしている。多くの就業者数を抱える一方で、居住者はごく僅かであり、昼夜の人口の差が非常に大きい。

 この地区は古くから日本の経済の中心として重要な役割を果たしてきたが、1990年代後半に入るとその設備・機能も更新の必要性が生じはじめ、2000年代から活発に再開発が行われてきた。2002年の丸ビル再開発を皮切りに、従来の業務中心のまちから多くの機能が集積した複合的なまちへと更新がなされてきた。

 開発・計画主体としては、大丸有エリアでは、1996年に公民連携(PPP)の考え方のもと、千代田区、東京都、JR東日本、三菱地所を始めとした地権者を会員とするまちづくり協議会の4者による懇談会が組成され、公民が合意した内容をガイドラインとしてまとめている。個々の開発をガイドラインによって誘導・調整することにより、歴史的な景観の継承計画的な質の高い建築への更新、公的空間の整備をはじめとし、公民が協調した総合的なまちづくりが行われている。

 

 

集合写真

大丸有の位置関係図

大丸有まちづくり懇談会


行幸通り

 行幸通りは、東京駅から皇居まで伸びる全長約200m、幅約74m の通りのことを指し、2010 年には、中央に歩道兼馬車道として新たに広場状の空間が整備された。行幸通りは1910 年に初めて整備されたが、当時は、日比谷通りまでしか整備されていなかった。現在の長さになったのは、1926 年であり、関東大震災(1923)の震災復興事業の一環として皇居から東京駅へ通じる通りとして整備された。

 「まちづくりガイドライン」の中では、行幸通りに面するエリアは、当地区を最も象徴づけるエリアであり、東京駅と皇居を結ぶ空間として、一体的に調和した都市空間を創出するために建物の連続性を重視した建築物とすることが明記され、景観整備が積極的に進められている。

 また、行幸通りの地下は、1960 年から駐車場として利用されてきた、その後、2007 年に民間企業による特定街区の敷地外公共貢献事業として再整備が行われ、地下2 層ある駐車場の内、地下1 階部分に行幸地下通路が完成した。この地下通路は、通路としての利用以外に、「行幸地下ギャラリー」としてアート展やイベントが行われ、空間が活用されている。

行幸通り

行幸通り地下


仲通り

 仲通りは、丸の内・有楽町地区を南北に貫く通りであり、日比谷通りに並行している。1964年時点では業務機能のみで殺風景であったが、通り過ぎるだけの「動線」ではなく居心地の良い「空間」、丸の内・有楽町地区における賑わいの軸として再整備された。「まちづくりガイドライン」の中では、丸の内・有楽町地区における歩行者の中心軸として、ゆとりある歩行者空間の整備、店舗ファサードやストリートファーニチャー等による賑わいの創出や緑の再整備等街路環境の整備について示され、丸の内・有楽町地区における賑わい形成の軸として位置付けられている。これを実現するため、全幅21mのうち、車道幅員を9mから7mに狭める一方で、歩行空間を7mに拡大し、歩車道で一体的な舗装が施されている。丸の内仲通りは公道と民地により形成されているが、街路と建物低層部の商業店舗が一体となった景観を生み出している。

 また、このような丸の内・有楽町における仲通りの機能を、大手町まで延伸し、大丸有地区を貫く歩行者空間の形成が計画されており、その計画の一環として2014年に「大手町の森」事業(3600 m2)が完了した。

仲通り

大手町の森


容積率インセンティブ制度

 歴史的建造物の保存や公共公益機能の拡充を目的として、大丸有地区では容積率インセンティブ制度が活用されている。以下に主な関連事例を紹介する。

  • 明治生命館:「重要文化財特別型特定街区制度」の適用により街区全体で容積率1,500%を実現
  • 丸の内パークビルディング基本の1,300パーセントに加え、東京駅の130%、都市再生特別地区に基づく三菱一号館美術館の文化施設としての100%、地域冷暖房プラントの設置による35%をそれぞれ積み増しての合計1,565%を実現
  • JPタワー:「特例容積率適用地区制度」により東京駅丸の内駅舎上部の未利用容積約25,500㎡が移転され容積率1,630%を実現

 また東京駅においては、2002年に丸の内地区で制定された特例容積率適用地区制度の制定により、未利用容積率を制度適用地区内であれば、移転することが可能となった。JR東日本は東京駅上空の未利用容積率を売り、その資金を駅舎の復元の財源として用いている。容積率の移転先は丸の内地区内の6つのビルに分配されている。

JPタワー

サマリーディスカッションの様子